2024.05.01
土地・建物を
貸している相手方が
破産した場合、どうなる?
弁護士 野田 泰彦 氏
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
今回は、土地・建物を貸している相手方が破産してしまった場合について、ご説明します。
破産手続の中で、債権者が一番気になるのは、支払いを受けられるかどうか、だと思いますが、これについては順位付けがなされており、財団債権→優先的破産債権→一般の破産債権→劣後的破産債権の順に支払いをすることが破産法で定められています。破産手続を進め、破産した会社の財産を回収し、債権を支払うために裁判所から選任されるのが、「破産管財人」です。
土地や建物を貸している相手方が破産した場合にどのような問題が起こるか?
上記のように、財産と負債の整理を行う手続が破産ですので、土地や建物を借りている場合に破産した場合には、通常は、土地や建物を返し、精算をすることが必要になります。では、このような場合にどのような問題が起こるのでしょうか。
1. 賃料の問題
破産手続開始決定前の滞納賃料は「一般破産債権」に分類され、配当による按分弁済の対象となります。他方、破産手続開始決定後明け渡しまでの賃料(または賃料相当損害金)は、「財団債権」と言って、優先的に支払われる種類に分類されます。ただし財団債権であっても破産した会社が財産をあまり持っていなければ、支払われなかったり、財団債権の中で按分弁済されたりすることもあります。
2.明け渡しの問題
明け渡しは借主の義務ですので、破産管財人が行うことになります。ただし、明け渡しの費用が負担できない、ということも実務上しばしばあり、この場合には、破産管財人とオーナーが協議して、残っている動産類はオーナーが処分することにし、手続き上明け渡しをしたことにする、等の場合もあります。つまり、実質的には、明け渡し費用をオーナーが負担する、ということになります。
3. 原状回復の問題
原状回復も契約上借主の義務となる範囲で破産管財人が行うことになりますが、原状回復費用を破産手続で処理する、ということになります。この原状回復費用を、「一般破産債権」と扱うべきか「財団債権」と扱うべきかについては、裁判所や文献によって見解が分かれています。しかし、財団債権の扱いであったとしても、破産した会社が財産をあまり持っていなければ、支払われなかったり、財団債権の中で按分弁済されたりしてしまうこともあり、明渡費用と同様、実質的には、原状回復費用を、オーナーが負担することになるという場合もあります。
土地や建物を貸す場合に気を付けること
結局のところ、土地 や建物を貸した相手方の会社が破産してしまった場合には、その会社がたくさんの財産が残った状態で破産したかどうかによって、滞納賃料の支払いや明渡し•原状回復費用の支払いを受けられるか、が変わってきます。従って、オーナーとしては、破産しないような会社に貸すことが何よりも重要ということになります。そして、仮に破産しても一定の支払いが担保されるよう、適切な敷金を預かっておくことや、代表者以外の個人を保証人にしておく(会社とともに代表者が破産することもあるため)、などの方法も有用です。