賃貸経営コラム

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建物や造作が持つリスク

2022.09.21

弁護士
権田健一郎 氏

権田健一郎 氏
コラムイメージ

土地の上の建物や造作などが壊れるなどして他人に損害を与えた場合、損害賠償責任を負うリスクがあります。
 この責任は、法律用語では工作物責任といい、民法の条文に定められています。
 この責任が認められるためには、①「土地の工作物」について、②「設置又は保存に瑕疵(欠陥)」があり、③それによって他人に損害が生じた、という3つの要件を満たす必要があります。
 ④そして、これにより、まずは工作物の「占有者」が責任を負うとされており、占有者が必要な注意をしたときは、占有者ではなく工作物の「所有者」が責任を負うとされています。
 ①「土地の工作物」とは、土地に接着して人工的に作られた物をいいます。裁判例では、建物の屋根、建物に併設されたプロパンガスの容器や風呂釜などが「土地の工作物」とされています。建物の一部のみならず建物に追加で設置した造作も「土地の工作物」にあたります。
 ②「設置又は保存に瑕疵」があるとは、工作物が通常備えているべきとされる安全性を欠いていることをいいます。裁判例では、危険な工作物が損害発生防止のための設備を備えないことを瑕疵と判断しているものが多く見られます。
 ③他人の損害が土地工作物の設置又は保存の瑕疵によって生じたことも必要です。
 ④占有者とは、工作物を使っている人のことをいいます。所有者が工作物を使っていれば、占有者=所有者となりますが、所有者とは別の人が工作物を使っていれば、その人が占有者となります。
 ただ、①~③の要件を満たしたとしても、民法では、「占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」と定めています。つまり、占有者が損害の発生を防止するための措置を講じていれば、所有者が損害を賠償しなければならないことになります。この所有者の責任は無過失責任であり、過失がなくても責任を負わなければなりません。
 実際に多い事例として、住宅の壁・屋根やカーポートが強風で壊れ、他人の家や車を傷つけてしまうというケースがあります。これらの建付けの強度がそもそも弱い場合や経年により建付けが悪くなっていたことが明らかなのにそのまま放置していた場合、「設置又は保存に瑕疵」があるとされ、工作物責任を負うことになってしまう可能性があります。
 このように、とくに所有者の方は無過失でも責任を負うことがあります。建物や造作に破損などがあり周囲の方に危険がある場合は、破損個所を修繕するなどの措置をとることが大切ですし、建物や造作の安全性を定期的に見直してみることも大切です。

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